
第5回(2005年1月)
川島 正敏先生(東海旅客鉄道 健康管理センター,15回生)
「鉄道会社における産業医活動」
15回生の川島 正敏と申します。よろしくお願いいたします。2003年6月に卒後の修練過程を修了後、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)の産業医として就職し、現在2年目になります。JR東海という会社の概要と、現在活動中である産業保健活動の一部分についてご紹介したいと思います。
JR東海は、国鉄改革により1987年に誕生した会社で、東京〜新大阪間の東海道新幹線、および名古屋・静岡地区等の在来線12線の輸送を担っています。社員数は約21,000名で、運転士、車掌、駅員などの運輸部門だけでなく、線路や車両の保守を行う部門や管理部門などのさまざまな職種に分かれています。
健康管理部門は、健康管理センターとして本社機構に属した組織となっており、産業医9名、保健師17名、事務6名の産業保健スタッフで構成されています。各種健診の他に、国土交通省令により動力車操縦者等に義務付けられた医学適性検査などを実施しています。事業場単位でみると、社員数が50名に満たない小規模なところが東京から大阪までの幅広いエリアに分散していますが、すべての事業場において担当の産業医および保健師が決められており、職場巡視および健診後の事後措置を行っています。
鉄道会社においては、輸送基盤としての安全性および正確性(安全安定輸送)の確保が最重要であると考えています。日々の業務だけでなく緊急時を想定した上で、常に危険因子の芽を摘みとる訓練は各所で行われておりますが、その中で健康管理上の適切な対処の必要性に対する認識も向上しつつあり、健康管理センターとしても安全安定輸送に貢献しております。今後もさらに充実させ、より社員および会社に貢献していくため、産業保健スタッフも努力を重ねています。
現在当社における健康管理上の対策のひとつとして、糖尿病の管理に特に尽力しています。糖尿病は現在増加しつつある生活習慣病であり、その危険性と対処の必要性について管理者および社員に周知させるべく保健指導を行っています。また重症の場合には、就業上の配慮を行うことでより重症化することを防ぎ、改善に努めるように指導をしています。具体的には、健診時の採血結果でHbA1c値が8.0以上(血糖コントロール不可群)である場合には、治療等により血糖コントロールが改善するまで時間外勤務および夜間勤務に従事させず、治療に専念させる措置を行っています。その結果、最近6年間で血糖コントロール不可群に該当する社員数は約65%減少しました。このような結果が、どの程度労働災害や休業日数の減少等に寄与したかどうかについてはまだ
充分に検証されてはおりませんが、これからも継続して実施し結果を出していく中で、明らかにしていきたいと思います。また、一時改善しても再度悪化する場合や、これまで認めていなかったのに新たにコントロール不可群に進展する場合も少なからず認めており、これらに対して有効に対応していくことも今後の課題として考えています。
またリスクマネジメントとしての健康管理の重要性を説明することにも力を注いでいます。働くことで健康状態がより悪化する状況を放置していることが安全配慮義務の履行の上で問題であることは明らかではありますが、健康を増進して疾病を予防することの有効性がどこまで理解されているかという点については、まだまだ向上する必要があります。産業医の行う健康管理は、企業にとって適切な安全配慮義務を履行する上で不可欠であり、事業場および会社全体にとって有益をもたらすことをより周知させていきたいと考えています。
現在進行中の産業医活動について、これまでに得た結果や、学会、研修会等で得た幅広い知識などにより、今まで以上に社員および会社に貢献していきたいと考えています。今後ともご指導の程宜しくお願い申し上げます。
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